赤目の狩人 #1 「真紅のチョコレートソース」

凛として咲く花のごとく、それは鈍い色を奏でて。
凛として散る華のごとく、それは真紅の匂いをつけた。
 
 
「いいじゃないさ、減るもんじゃないし。」
「その発言が一番信用ならないよ。」
そういってミヅキは手を振りほどく。
その瞬間、理性が吹っ飛び、気がついたら腕をつかんでた。
「やっ、やめろっつってんだろっ」
「そう言われると余計やりたくなるんだよね…それっ」
そういってミヅキの脇腹をくすぐる。ミヅキはすかさず悶絶する。
「やめっ、やめてってばっ…あはっ」
「嫌なわりには案外楽しそうだね」
 
自分こと、ヒロとミヅキの仲はこんな感じ。いつもこんな感じに接している。
時折ミヅキはドMなんじゃないかと思う。今度機会があったら、一度これでもかとくすぐってみることにする。
 
 
そんなある日。
「なぁーミヅキぃー」
「…何?」
「今度カラオケ行かね?」
「あぁー、いいよ!行く行く!」
 
「…と言ったは良いものの…何で二人きりなの…?」
「んー?なんか言った?」
「いーえー別に、何でもないですよ!」
「…?」
「…( /// ///)」
「…何してんのさ。」
「何でもないってば!」
 
気まずい。
ヒジョーに気まずい。
ちょっとだけ高鳴る胸。何を期待しているんだ、ボクは…。
すると、ミヅキは。
いきなり…。
 
 
それからしばらくして我に帰れば、そこは先程までの煙草臭い部屋ではなく、初めて見る場所だった。
いや、最後に見る場所だった。
どうにも頭が重い。
「…起きた?」
「ここ…どこ…?」
 
「君の、君の華を咲かせる場所さ。」
 
何を、いってるんだろう。
ヒロは、いつになく笑っている。
とても、とても。
唇だけが異常な程笑っている。
「何のこと……えっ…?」
「あ、それ?安心していいよ、確実に華を咲かせるために必要なんだ。」
「…ねぇ、ヒロ。」
「何?ミヅキ。」
「何で、笑っているの?」
「あぁ…何でだろうね。」
 
「多分…。」
 
「愉しすぎて、仕方ないからじゃないかな…!」
 
そういい放つヒロの目は、吸い込まれそうな漆黒の色を。
そう言い捨てたヒロの手には、黒く鈍く光る…光。
 
 
 
2月14日。
バレンタインチョコと言わんばかりのニュースが、奥様方を、若手社員を、そして、殺人鬼の血を騒がせた。
 
『バレンタイン女子高生殺人事件』
それは、鉈と血の臭いのする“赤目の狩人”の、初々しい晴れ舞台となった。