帰路




時折感じる風のにおい。
・・・排ガスのにおい。
倦怠感と鉄くずに囲まれて窮屈な部屋。
切れ目の見えない雲。
そう感じさせないための看板が、ただむなしく掲げられている。
それでも、道はあるのだから不思議なものだ。
 
時折感じる風のにおい。
・・・土砂とアスファルトのにおい。
舗装された道と竹やぶに囲まれた不思議な部屋。
雨上がりの土のにおい。
土の臭さと道路の照り返しが、ちょっとツラい。
それでも、道はあるのだから不思議なものだ。
 
時折感じる風のにおい。
・・・清涼感漂う匂い。
架けられた小さな橋と、砂利を踏む音が響く広すぎる部屋。
サラサラと流れる水。
イヤホンで拒んでいた外界を受け入れようと思ってしまう。
それでも、道はあるのだから不思議だ。
 
時折感じる風のにおい。
・・・カレーのにおい?
コトコトと軽快な音が響く部屋が近い。
暖かな光。
うっかりしていた、もうこんな時間か。
やっぱり、道はあるのだから不思議だ。