遠く、遠く

都会の光をよそにひっそりと光る星。
都会すらも優しく包む青白く光る月。
ふと見上げれば、そこにある。
見上げなければ、なかったけれど。
 
遠く、遠く。遥かむこうの光。
幾千もの時を、距離を越えて、ひっそりと、光ってるだけ。
なのに、あんなに、悲しそうなのは、なんでだろう。
 
儚い夢の詩を歌う星たちと、青白く、傍、と照らすだけの月。
なのに、あんなに、綺麗なのは、なんでだろう。
 
夢を見るのはいい加減にしろ、という大人の声。
現実から目をそむけるな、という大人の声。
だけど。
夢を捨てていったのはあなた達で、それはあなた達の判断であって。
ボクは、夢を、まばゆいまでの閃光を、この手につかんでいたいんだ。
この手の中で光る星々を、ただぼんやりと観ていたいんだ。
感傷を帯びた目で、切なさを感じた手で、この手に七色に光る夢を。
 
手を離すと、それらは猛スピードで飛び去っていき。
そして、僕の手には何も無くなった。
いや、そう見えただけだったんだ。
よく見るとボクの手のひらで光るたった一つの光。
誰にも消すことのできない、まばゆい儚い閃光。
でも、確実に在る閃光。
 
今夜も、月は。