罵詈雑言

大人になる、って、どういうことなんだろう。
 
 
冷たくなることかしら。
 
 
それでだいたいあってたりするのかしら。
 
 
もしそうだったら自分はきっと大人になれないままだろうなぁ。
 
こんなに感情的な人間が、冷静になれるわけないもの。
こんなに馬鹿な人間が、計算高く生きれるわけないもの。
 
なんというかね。
うん。
 
 
 
悲しいなぁ。
 
 
 
多分自分は恋人ができたら甘々になっちゃうんじゃないかな、とか思う。
…自分はそういう風に生きてきたから…。
 
 
きっとどんな人よりも優しく生きてきた。
難病もなく、入院もせず、いじめをいじめと感じず、皮肉を皮肉ととらえず、正義を信じて、夢だけを追って、ただひたすらに、ただどこまでも子供で、なんにも考えないで、こうやって今の今まで生きてきて、きっとこれからも生きてって、死ぬまでそれらを疑わないで、それでいいんだって言い聞かせて、ただ世界の白いところだけを見て、自分は死んでいくんじゃないかな。
それくらい、自分が思うよりも自分は単純で、自分が感じているよりも自分は愚かなんじゃないか、って思う。
 
 
でも。
 
そうやって生きてきた十数年間を無駄にできるほど、自分は強くない。
 
それでも。
 
そうやって生きてきた日々をこれからも貫き続けていけるだけの強さは備えている、きっと。
 
 
 
人より夢見で。
人より皮肉屋で。
人より優しくて。
人より愚かで。
人よりつまらなくて。
人より笑って。
人より冷たくて。
…人より、普通で。
 
 
自分が嫌いになる瞬間は今でも時々ある。
自分を好きになんかなれっこない、って思ってる。
 
それでも。
どれだけ思っても。
そんな自分と向き合わなきゃいけない。
そんな嫌いな自分を作ったのは、そんな嫌いな自分を選んだのは、紛れもなく、そんな嫌いな自分自身なんだ、って。
そう思ってるのは、その大嫌いな自分自身なんだ、って。
それは死んでどうにかするような、大層なことなんかじゃないって。
だから死ねないし、死なない。
しかも生きてる心地も、あんまりしない。
 
 
 
だから、ね。
 
思ってるんだ。
…ピエロであれ、って。
 
 
 
顔で笑って、心で泣いて。
それでいいじゃない。
幸せがなんたるかを考えて生きるよりかはよっぽど幸せに生きれるんじゃないかな。
 
 
心からの幸せ、そんなものをはなっから望んではいけない、ってね。
望んで生まれる幸せなんて、所詮は幾何学模様の幸せなんだ、って。
 
衣食住がそろっていれば、精神的にどうあろうと、幸せな人様の暮らしはいくらでもできる。
それ以上の幸せなんて、求めるもんじゃないのかな。
…なんてね。
 
 
 
勝負とは程遠い世界で生きてきた身だもの。
…平穏な、普遍的な、つまらない世界でしか生きてきてないもの。
そんなに面白いことなんて、どうせ言えやしないさ。
だから、ね。
 
ピエロにね。
 
 
 
幸せも、苦痛も、人間だもの、そのうち慣れていってしまうわ。
そのうちに、どんなにぶっ飛んだ感覚でも、飽き飽きするほどに慣れていってしまうわ。
だから、信用ならないのは、自分自身。
自分というバケモノに慣れていったの。
おぞましく、かよわく、喚き、叫んでいるはずの、バケモノをね。
 
 
そのうちにどんな幸福も絶望もきっと慣れて退屈になってしまう。
きっと、そのときにはじめて、大人になるのね。
 
 
なんて、孤独。
 
 
 
野生であれば、こんな悩みを抱えずにすんだかもしれないのにね。
高度に進みすぎた世界は、それゆえの恐怖に悩まされるものね。
なんて皮肉、なんて滑稽。
それが、大人の姿なのかしら?
 
 
 
ピーターパンは、そんなことを考えていたのかしら?
ネバーランドは、それを解消したのかしら?
 
もしそうだとしても、もう私はいけないわね。
 
だって私はもう、このことを知ってしまったもの。
開けたパンドラの箱は、もう元には戻らないの。
後悔先に立たず、ってね。
 
 
 
 
冷たくなりたくないな。
優しく生きてきた人だもの。
 
 
でも、ね。
自分の中に刻まれているこの無関心があるかぎりは、きっと無理な話。
そうよ、この優しさなんて所詮作りもの。
本当は、もっと黒々として、何もかもを恐れて、何もかもを嫌って、まるで凍てついた金属のように冷たいの。
わがままで、気分屋で、刹那的で、つまらないの。
本当の自分は、知らない間に大人にでもなっていたのかしら。
普段の自分の、悩みなんていざ知らず、みたいに。
 
 
優しくありたい、と願うのは、そうでない自分がいるから。
幸せになってほしい、と願うのは、そうでない自分がいるから。
 
笑うなら笑え、泣くなら泣け。
勝手に生きて、勝手に死んでいけ。
 
笑ってくれ、泣いてくれ。
幸せに生きて、幸せに死んでいってくれ。
 
自分のなかで二つの声が代わる代わる響く。
あぁ矛盾。
どこでこんなエラーが生じたのだろう。
どこでタイプミスをしてこんなプログラムを作ってしまったのだろう。
 
 
 
好きになれない自分。
嫌いになりきれない自分。
 
 
…だから。
…だから、だいっきらいなんだっ…!
 
 
 
大人になんかならないでいい。
子供であることを恥じなくたっていい。
でも大人であるように願い続けてりゃいい。
そうやって苦悩しながら死んでいけばいい。
無関心さを装って、ただただ逃げ続ければいい。
 
 
そうやって、泣きながら笑って、死んでくれ、自分。
それだけが、自分のあるべき姿だろう?
 
 
 
 
夢だけ信じて生きてればいいよ。
どうせそれしか見れりゃしないんだからさ。
現実をわきまえずに、ただそうなれるって信じてくれればいい。
それで今が仮初めの幸せであるならそれだっていい。
計算高く生きれるわけないものね。
バカだものね。
 
 
 
もう、いいじゃない。
別に、なんだってさ。
 
 
 
…幸せであれ。
そして、そのまま死ね、自分。
 
そんな自分も、嫌いじゃないよ?
好きでは、ないけどね。