愛した「もの」だから

どんな楽譜にも、必ず終止記号がある。
どんな本にも、必ず最後のページがある。
 
人もまた、同じ。
 
どんなに長年連れ添っても、どんなに長年恨んでいても。
例えそれが、家族でも、親友でも、主従関係でも、あるいは、赤の他人でさえ。
 
出会ったならば、必ず、別れる運命にある。
 
 
「そんなこと、」分かっているのに。
「そんなこと、」知っていたのに。
 
やっぱり、独りは、寂しいよ。
 
 
 
次のページには、どんな音符が、どんな文字が刻まれているのだろう。
そして、その内のどれくらいを忘れてしまうのだろう。
 
それが、酷く、怖い。
 
怖い。
 
 
 
出会いは奇跡だが、離別は、運命だ。
そのことが、胸を締め付けて放さない。
 
一番離れてほしいものだけは、いつだって一番最後まで残る。
一番離れてほしくないものは、離れたことすら忘れる。
 
 
そうやって僕ら、大人になっていくんだろう。
 
 
 
乗り越えられや、しないよ。
全部、全部。