誰かの生き方だったものが、今度は自分の生き方になって。



それは、傍から見ればなんてことない日常の風景。
ごくありふれた、些細な出来事。

でも、その当人にとってみれば、それは百頁にも及ぶ長編物語。
二度と出会うことの無い運命的な展開。



物語の終幕は、新たなる物語を創り出す。
たとえその主人公や展開が異なっていても。

物語の始まりは、新たなる苦悩を生み出す。
たとえその悩みが些細であったとしても。



誰かの生き方だったものが、今度は自分の生き方になって。
自分の生き方が、今度は誰かの生き方になっていく。

似通った精神だと嘲笑うのもまた一つ。
けれどもそう思ってしまう精神もまた、似通った精神の一つ。



感動は、新たな冒険の序章にすぎない。
そこから始まる苦悩など、知らぬままに。

困難は、新たな感動へのエピローグにすぎない。
そこから生まれる成功ほど、確固たる意思はない。



誰かの生き方だったものが、今度は自分の生き方になって。
自分の生き方が、今度は誰かの生き方になっていく。

そうやって、まわり、まわって。
いつまでも、まわり、まわって。

終わりの無い、感動と苦悩のスパイラル。
紛れも無い、人間らしさのエンブレム。



そういう、全てが。
そういった、全てこそが。



人が、あるいは、世界が。
夢、と呼ぶにふさわしいとするものなんだ。